太郎へ

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最近面白かったことがある。

 

仲の良い後輩(私に対して「自分ほんまプライド低いよな」等、後の輩が発したとは到底思えないことを平気で言う輩)が、愛媛へ転勤になったことだ。ちなみに、私はプライド高さでこれまでたくさん損があったなと思うので、正確には低いわけではなくて、低く生きようと試みているのだが、そんなことを長々と説明しようものなら「だまれ」と言ってくる輩である。仲良くしている私も私だが、こいつには1度「後輩としてあるべき姿」「後輩の義務と役割」「先輩と後輩の関係性」等の題目で研修してやりたい。

 

そんなナメ腐った後輩(後輩らしさが微塵もないやつを後輩と呼ぶのは癪なので仮名「太郎」として以下綴る)が、愛媛は松山という地へ旅立つ事実が、私的には最高に面白い。

 

断っておくと、私は心から愛媛および松山という場所がすごく好きである。数回旅行した程度だが、鯛めしや道後温泉などは至高以外の何でもなかったし、絶対にまた訪れたいと思う。大阪→東京→大阪と都会でしか生活したことのない自分が愛媛を面白いとか言うと、「愛媛?田舎すぎ(笑)」と面白がっているふうに映るかもしれないが、そんなことはありません。万が一田舎であったとしても、静かなところの方が好きなのでむしろ魅力を感じます。墓穴を掘るような言い方しかできませんが信じてください。愛媛生まれおよび愛媛を愛してやまない方々から嫌われたくないんです。

 

では何が面白いかと言うと、太郎も大阪→東京とこれまできているのだが、友だちや知り合いが0ではない、遊びたいと思った時に遊ぶことができる地から、ほぼ間違いなく友だちも知り合いも居ないであろう地へ飛ばされることが面白いのだ。もちろん1人で遊べばいいのだが、私の知る限り太郎はそれが絶対にできない。できないから尚更面白い。できないというか「ソロ〜」とか「1人〜」をとにかくバカにするやつなのだ。

 

私は昨年、どうしても鰻が食べたくなってひとり浜松へ旅立ったのだが、その話をしたら「マジで何が楽しいかわからん」「友だちおれ以外おらんのか(※お前後輩なんですけど)」と、これまた先輩に浴びせるものとして0点すぎる返答だったので、太郎は1人で遊べるわけがないのである。「鰻が食べたくなって1人発つのはおかしい、太郎の言うとおりだ」と指摘されても、キッと睨み返すことしかできないので、その点は触れないでください。

 

バカ太郎は友だちが多いのだが(褒める時は癪な思いを相殺するべくバカ太郎と綴る)、さすがに愛媛には知り合えさえ居ないようで、会社の愛媛支社的なところにもご年配の方が多いらしく、その時点で私は笑いが止まらなかった。1人での遊びに魅力を感じない太郎は、遊ぶためにまず友達をつくるところからスタートしないといけない。ざまあ見ろである。痛い目を見て欲しいと思う対象に実際天罰が下ると、人間は同情など一切なく笑えます。

 

ひととおり笑った後、1人で何すんの?と聞くと「海辺で釣りをしながらウクレレを弾く」とのことだった。どうやら太郎は、どうしても自分の出向先を美化したいらしい。愛媛をハワイか何かと思い込むことに決めたらしい。ウクレレ。片腹痛い。笑いすぎで痛い。

 

また「友だちを作らないといけない」以外に、もうひとつ大きな懸念点があるようで、「車を買った方がいいかもしれない」ということである。こればかりは少し同情するのだが、鉄道で四国から出るのは、結構な至難技らしい。調べてみると香川⇄岡山で通っているようだが、松山から香川まで鉄道、香川から岡山も鉄道、岡山から地元大阪までもまた鉄道、帰りも文字どおり鉄道三昧。さすがに車無しは死ぬと思ったらしく、私も「そりゃ死ぬわ」と同調した。「長旅でも大好きな電車だから全然OK♪」などのキラキラとした鉄道愛を太郎は持ち合わせていない。バスやフェリーも手段としてあるのだろうが、不自由にも程があるだろうし、出費もすごいことになりそうである。不自由に耐え得る精神力も貯蓄も、もちろん太郎は持ち合わせていない。なんか悪く言いすぎてる?ゆるせよ太郎。

 

貯蓄が無いという点で、なら車買うのも中々厳しいなぁという話をしたことがある。そしてそこから「車に比べりゃ安いしセグウェイはどうか」という話に発展したことがある。発展した時点で(私も含めて)気がどうかしていたとしか思えないが、お金がないというのはそれほどに目を背けたくなることなのだ。「松山から東京までセグウェイで行ったら100万あげる」と、常人にやったならば鼻で笑われるであろう提案をしたところ「マジでありやな」と本気の返事だったので、爆笑してドン引きした。

 

愛すべきポンコツと言いたいところだが、愛せる余地が一切ない。明石海峡大橋セグウェイで渡れると思っているやつを愛すなんて私には無理である。運転中、下手すれば車も横転するような暴風の中、懸命に前傾姿勢で進むやつが見えたら、あなたはそいつを愛せるだろうか。愛せる!と言う方、愛す前に爆笑して事故ると思います。

 

さて、そんなポンコツ太郎へ、私は1年長く生きている身として、物申したい。忘れているかもしれないが私はお前より1年長く生きているし、年齢がたった1歳差しかないことに強く憤りを感じている。

 

太郎よ、君は愛媛に行く。全く予想外の地で楽しみな思いもあるだろう。愛媛に行くと言うと皆笑うだろうし、それをおいしいとさえ思っていることだろう。心から救いようが無い。

 

一方で、不安もあることだろう。不安なんかないわ!と強がりたい気持ちもわかるが、セグウェイとか言ってる時点で動揺が見え見えである。新天地で右も左もわからない中、仕事も覚えないといけない、友だちや車のことも考えないといけない。ウクレレっぽさが年中あり続ける常夏の地でもない。頻繁に地元へ帰って来れる距離でも、頻繁に友だちが来てくれる距離でもない。

そんな、色んな思いが錯綜しているであろう君に、物申そう。

 

ドンマイ。過去は変えられない。

 

ドントマインド、つまり気にするな、である。これ以上のアドバイスは存在しない。気にしたところで、悔やんだところで、決まったことは覆せない。私も今年は厄年、この4ヶ月だけで既にやり直したい過去ばかり溢れている。今年だけでなく、人生振り返ってみれば、色んな場面でやり直したいことがポンポンと出てくる。

 

でも、これらは全て受け入れるしかない。ああしとけばこうしとけばなんて考えるだけバカらしい。「もしもあの時」なんて酔狂な世界は存在しないよこの結果だけが現実さ、っていうおつる中将の名言がここで響いてきます。「おつるさんが言うならそれはそうやな」と間抜け顔で頷く君の顔が目に浮かぶけど、おつるさんが言うならそうです(間抜け顔)

 

逸れたけれども、君がなすべきことは、愛媛での生活を存分に、余す事なく楽しむことである。数年後、愛媛から出たくないと胸を張って言えるぐらいに、楽しむことである。君の会社の人事は、お調子乗りな君に対して「しめしめ愛媛にでも飛ばしてやるか」と思ったのかもしれないが、「愛媛に行かせてもらってありがとうございました!」と数年後に言い放てるよう、頑張りたまえ。それでまた「しめしめ次はこんな辺鄙なところでどうだ、これなら太郎もきついだろう」となっても、君なら大丈夫。私は笑うけど。君なら、どこでも、置かれた場所で死ぬほど楽しく生きていける。私はめっちゃ笑うけど。

君がどこへ飛ばされようと、1回ぐらいは遊びに行きたいと思いますので。愛媛は2回ぐらいかなァ。

 

偉そうに人のことばっかり言いましたが、私も過去のことはほったらかして、未来だけを見て、大阪での新生活を死ぬほど楽しみたいと思います。太郎以外の皆さま、太郎って誰?となる文章を書いてしまいました。すみません。でも久しぶりに書けて楽しかったです。笑いながら書いてました。1年以上書いてませんでしたが、また更新したいなと思う時に更新するので、どうしても暇だという時に読んでください!